初版: 2007-09-21
最終更新日:
2007-12-27
迷惑メールを減らす有効な方法として、 いわゆる「一見さんお断り方式」とも称される 「greylisting」が知られています。 しかし、この方法では、「一見さん」からのメールに対する 遅配を避けることはできません。
とはいえ、遅配は必ずしも避けなければならないというものでもありません。 メールを読むことができないタイミングで到着するメールであれば、 遅配しても困ることはありません。 メールを読めるようになるまでなら、何時間遅配しようと構わないのです。
そこで、当サイトでは、昼間は「一見さん」からのメールを素通しにし、 夜間には「きっちりgreylistingを適用する」という方法をとりました。 これで、そこそこ迷惑メールを排除することができます。 昼間に到着するメールは遅配することもなく、 greylistingにまつわるメンテナンスにわずらわされることもありません。
また、送信元に対してゆっくり応答する「throttling」も 有用であることが知られています。 Postfixで、グリーティングメッセージを返す直前に ゆっくり応答する「greet pause」を (かけられないこともないですが、副作用もあるので) 簡単にかけるためのパッチも作成しました。
また、本迷惑メール対策手法は、結構効果があり、 かつ、メンテナンスも不要なので、仕事場でも導入しています。
ブラックリストやホワイトリストのメンテナンスをしっかりしたり、 迷惑メールの誤認識 (迷惑メールでないメールを迷惑メールと判定して捨ててしまうこと) を気にしなければ、 いくらでも迷惑メールを排除することはできるでしょう。 本手法の特徴は、 そのような手間を一切かけずに「ほどほど」の効果を狙っている点にあります。
いくら手間をかけても、 誤認識を限りなくゼロに近づけ、 なおかつ、迷惑メールの排除率を100%に持っていくことは (MTAだけの対策では) 不可能だと思います。 本対策手法は、ものぐさな管理者向けの現実的な解だと考えます。 本手法で排除しきれない迷惑メールは、 メールクライアントの分別機能を併用して捨ててください。
迷惑メール対策にかける手間が、 手で迷惑メールを捨てる手間を上回るなら、 わたしはその対策を選択しないでしょう。
→Postfixでの迷惑メール対策設定例 (./config.html)
【/etc/postfix/main.cfの設定例】
smtpd_client_restrictions = permit_mynetworks # reject_unknown_client check_client_access regexp:/etc/postfix/greet_pause
【/etc/postfix/greet_pauseの例】
# # /etc/postfix/greet_pause # wait a second before ``220 hostname'' greeting message # ## 逆引きできないところは(迷惑メールを送ってくることが多いので)待たせる /^unknown$/ sleep 60 ## とりあえず、全ての送信元を1秒待たせる /./ sleep 1
【/etc/postfix/main.cfの設定例】
smtpd_recipient_restrictions = permit_mynetworks reject_unauth_destination check_policy_service unix:private/policy check_client_access regexp:/etc/postfix/client_access
【/etc/crontabの設定例】
#min hour mday month wday who command 0 6 * * * root /bin/sh /usr/local/libexec/ctrl-greylist.sh pass-through 0 0 * * * root /bin/sh /usr/local/libexec/ctrl-greylist.sh check-on
【/etc/crontabの設定例】
#min hour mday month wday who command 30 7 * * 1 root /bin/sh /usr/local/libexec/clear-greylist.sh
電子メールは、 「人と人」をつなぐコミュニケーション手段の一つだと考えています。 確かに迷惑メールは邪魔な存在ですが、 コミュニケーションを損ねては本末転倒ではないでしょうか。
迷惑メール対策というのは、 「届けなければならないメールを確実の届ける」 あるいは 「読み落としてはいけないメールを確実に受信する」 ことを目的として 「そのための手段として迷惑メール対策を上手に行う」 ことが重要なのではないでしょうか。 いいかえると、快適なメール環境を実現する(←これが目的)のために、 迷惑メール対策をうまく行う(←これは手段の一つ)ということが 大切なんだと思います。
少々脱線しますが、電子メールだけでなく、 さまざまなコミュニケーションツール(電話、手紙、…)を 上手に使い分けることも大切かもしれませんね。